私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「こと、ね?」
「…ッ」
どうしよう。季龍さんの隣になんて立てないよ…。
目を閉じてうつむく。でも、頬に触れた温もりに顔を上げた。無表情の季龍さんに身構えたけど、フッと笑ったその顔にまた心臓が高鳴る。
「キレイだ」
「ッ…」
不意打ちはズルい…です。
言い返すことも出来ないまま、高鳴る心臓を何とか静めるのに意識を向けることしか出来なかった。
「…ここちゃん化けるなぁ」
「互いに見とれるのはその辺にしていただいて。そろそろ向かってください」
田部さんの言葉に信洋さんも時計を見て車のドアを開ける。
「若、ここちゃん、どうぞ」
おどけたように、わざとらしく執事の真似事をする信洋さんに思わず笑う。
全然礼儀も作法も合ってない。でも、それが信洋さんらしくて、緊張していた心が解れたのを感じた。