私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

息を止めてゆっくり振り返る。

その姿を目にした途端、沸き上がったのは恐怖だけだった。

視線が重なる。そらしたいのに、逃げたいのに、金縛りにあったように動けなくなる。

「…琴葉、無事だったんだな」

「ッ来ないで!!」

近づいてこようとした彼にとっさに叫ぶ。息をするのが辛い。手の震えが止まらない。

止まれ、止まれ、止まれ、止まれ、止まれ…。

止まって…。

「琴葉…。……悪い」

ピタッと震えが止まる。

…なんで、謝るの?……なんで、謝ってくるの?

「ッ…悪い?………悪いって、許せって言うんですか!?」

「…ち、ちが……」

「自分のしたことが分かってるんですか!?こんなところに平気で顔出して!!…一歩間違えたら死んでた。殺されてた。…そんなところに行かせたくせに、あなたは!!」
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