私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
誰もいなくなった部屋の布団の上で、さっき聞いた話の整理に頭を動かしていく。
田部さんは陣之内華江様の元筆頭執事。
そして、お母さんは田部さんの部下として働いていた。
田部さんは前々からおばあ様のお願いで、陣之内家の影の調査をしていた。それは、いわゆる麻薬と呼ばれる薬物の売買や、高額な利子を付けたお金を貸す事業のこと。
もちろんそれはおばあ様と田部さんだけの秘密で、他の使用人が関わることはなかった。
でも、あの日。旦那様の目を盗んで調査していた田部さんは、旦那様が当時雇っていた男に見つかってしまった。
撃たれて間一髪のところで急所は免れたけど、死んだふりをして隙を見て逃げるつもりだったみたい。
…そして、私が隠れたあの部屋に連れてこられた。そのあとのことは、私の記憶と同じ。
私が見つかって、殺されかけたところにおばあ様が部屋に入ってきて、驚いた男はおばあ様に発砲。
男と旦那様が言い争っている隙をついて田部さんは私を抱えて逃げ出したらしい…。
そこまでは分かった。でも、そのあとのことを私は覚えてない。
あの場所で見た記憶は鮮明に思い出せるのに…。