私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
『旦那様は、華江様を殺した旦那様…今の会長を陥れるために、琴葉さんをここに連れてきたんです。…あなたは、私が大奥様を殺していないという、唯一の証人でもあるから』
『でも、陣之内家の影の部分を知っているのは、田部さんも同じです。私だけが証人なんて、そんなの…』
『私では、ダメなんですよ』
そう言って悲しそうな顔を浮かべた田部さんは、両手を握る。
『私は、裏の世界に長く留まりすぎました。私が情報を持って出ても、説得力に欠け、負けてしまうかもしれない』
『で、でも私じゃ、子どもの言うことだって流される可能性だってあります。私が陣之内家を潰せるなんて、とても…』
『違いますよ、琴葉さん。陣之内家を潰すのではなく、会長を引摺り落とすんです』
田部さんとの会話を思い出したところで大きくため息をつく。
私が、会長を引摺り落とす?
本当にそんなことできるのかな…?
あの時の記憶は、きっと逃げていれば忘れていたもの。
忘れなかったのは、記憶の奥底に閉じ込めたのは、あの時の光景はあの人を見るたびに思い出してしまうから…。
何度も忘れて、何度も思い出して、何度も何度も繰り返すうちにあの記憶は私の頭にこびりついて離れなくなってしまった…。