私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
ため息をつく。
私が、私があの時あそこに隠れなければ、おばあ様は、お母さんは、きっと今も側に居てくれたのかな…?
遠慮がちなノックが聞こえる。襖に視線を向けると、僅かに開いた襖の隙間から顔を見せたのは梨々香ちゃんだ。
「ことねぇ、大丈夫…?」
「うん、大丈夫だよ」
微笑んで体を起こそうとすると、梨々香ちゃんは部屋に飛び込んできて体を支えてくれる。
「ありがとう、梨々香ちゃん」
「…ことねぇ、無理して笑わないで」
梨々香ちゃんの言葉に一瞬固まったのを自覚した。
それでも何とか笑みを貼り付けようとするけど、梨々香ちゃんの心配そうな顔に笑うのをやめた。
「考えちゃうんだ。私があの時、あの部屋に入らなければ、今もおばあ様とお母さんは、生きてたんじゃないかって」
「ッそんなの…」
梨々香ちゃんはそう言いかけて言葉を飲んだ。
きっと、自分と重ねたんだと思う。
季龍さんに守られてここにいる、自分自身に。