私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「…あんな人たち、どうでもいいんです。どこで死のうが、苦しもうが、どうでもいい」
はっきりとそう言い切った琴音の声には怒りも、憎しみも感じられない。ただ、淡々と繋がれる言葉に感情はなかった。
「でも…」
抱き締められた手に力がこもる。
「私のせいで、季龍さんが、永塚組の誰かが、人殺しになるのは嫌です」
息をするのを忘れた。
予想すらしていなかった理由。そんなこと、考えすらしなかった。
嫌な汗が背を伝う。琴音に触れられている手が震えないか、緊張で喉が痛んだ。
「…この手は誰かを傷つけるためじゃなくて、守るために使ってほしいです。梨々香ちゃんを、信洋さんを、源之助さんを、平沢さんを、暁くんや、奏多さん…永塚組の皆さんを、 を……」
「今、なんて」
最後だけ聞き取れなかった言葉。それを聞き逃してはいけなかったような気がして聞き返すが、琴音は微笑むだけ。
俺の手に、そっと額をつけた琴音の表情は完全に見えなくなる。
「だから、季龍さん。どうでもいい人のために、この手を使わないで…」