私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
琴音の両手から鼓動が伝わってくるような気がする。
熱い。そう思うのは、見せつけられたせいなのか…?
「…季龍、さん?」
不安げな瞳に見つめられて我に返る。何でもないと頭を撫でると、ようやくホッとしたような顔をする。
「もう寝ろ。風邪引く」
肩を押せば素直に従う琴音に少しだけ安堵する。琴音が離れた途端、冷たい風が吹き抜けたことに思わず身震いする。
それを見られたのか、毛布を差し出そうとしてくるのを押さえた。
「…季龍さんも、風邪引かないでくださいね」
少しだけ不満そうに俺を睨む琴音に苦笑いが浮かぶ。それ以上は何も言わない琴音が部屋に入るのを見届けた途端出たのはため息だ。
考えていなかった。琴音を傷つける奴を消すことだけにしか目がいっていなかった。
手が汚れることなど、気にすることさえなかった。
守るために、か。自分の手を見てもそんな風には思えないのは…。
息をつき、立ち上がる。
それでも、進むしかねぇだろ。俺は、永塚 季龍だ。
腰をあげ、部屋に戻る。その頃には、腕の中にあったはずのぬくもりは消え去っていた。
季龍side end