私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

使用人たちを廊下に残し、部屋に足を踏みれたのは総一郎と正裕。そして、源之助と琴音の4人だけだ。

向かい合わせに置かれたソファーに別れて座るものの、祖父同士は睨み合っており、正裕と琴音は目を合わせようともしない。

気まずい空気が流れ、今この場が婚約者同士の顔合わせであることを忘れてしまいそうだった。

「改めてにはなるが紹介しよう。孫の正裕だ」

「ッ…あ、陣之内正裕と申します」

唐突な紹介に一瞬反応が遅れた正裕は、顔あげた時自分を見つめる琴音と視線が重なる。

その瞬間、正裕の心を占めたのは困惑だった。

目の前に座る琴音に激しい違和感に襲われたのだ。

「琴音、あいさつを」

「…」

源之助に促されるが、琴音は口を開かない。

うつむき、固く手を握っているその姿は緊張しているのが明らかだった。
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