私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

流石の正裕もこの婚約がただの婚約ではないことを察する。

明らかに祖父のたくらみがある。それも、悪い方向でのたくらみだ。

祖父がきれいごとだけで会社を大きくしたわけではないことを知っている。社会的に認められないようなことをして、それを隠そうしていることも…。

今度は一体、何を考えているのだろうかと祖父を見る正裕の目は、疑り深いものがある。

それを琴音はじっと見つめていた。

本人たちをそっちのけにした祖父同士の話が続き、正裕が解放されたのは、源之助たちと一緒に来た女性の使用人が呼びに来るまで続いた。

結局、正裕と琴音が言葉を交わすことは1度もなかった。

「あの」

「え?」

去り際、琴音からの言葉かけに正裕は呆けた顔をする。

そんな正裕に微笑んで見せた琴音は、そっと正裕に近づく。
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