私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
背後から聞こえた足音に思わず振り返ってしまう。
振り返った先に、希望なんかないと分かっていたのに。私の元から立ち去るように、背を向ける季龍さんに胸が張り裂けるような痛みが走る。
でも、季龍さんの手を振りほどいた私が、かける言葉なんか何もない。
私は、季龍さんの望む女性には、なれないんだ。
「…すみません」
「どうして、田部さんが謝るんですか?」
「すみません、すみません……」
「っ田部さんのせいじゃないです!!…誰の、せいでもないんです」
誰も悪くない。誰も、誰も……。
ただ、こうなる運命だった。それだけなんだ。
その後、すぐに私たちは永塚の屋敷を離れた。当然、季龍さんは見送りには現れることはなかった。