私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

「偽名、とは?」

この期に及んでまだとぼけて見せる源之助さんに思わず目を見張る。何を、考えてるんですか?

源之助さんの表情や態度に焦りなど一片も見えない。まるで、陣之内総一郎が次どのような手を打ってくるか、全て読めていると言わんばかりの余裕だ。

そして、その余裕は陣之内総一郎にも伝わっているのは明らかで、表情を険しくさせていった。

「この娘は、宮内琴葉だろう!調べられていないとでも思ったか!!」

はっきりと呼ばれた本名に思わず肩が跳ねる。

その時、ほんの一瞬、源之助さんが笑ったような気がした。

「…確かに、その娘は宮内琴葉さんに違いない」

「…」

源之助さんの落ち着きように何かを感じ取ったのか、陣之内総一郎は押し黙る。

彼は、失言した。それを悟った時、源之助さんは口を開く。
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