私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

「たくさん、たくさん苦労させたわね。源さんから全て聞いているわ」

「…フルフル」

なにか話さなきゃと思うのに、全然言葉が出て来ない。おかしいな。こんなはずじゃないのに…。

頭を撫でてくれていたおばあ様の手が離れる。顔を上げて見たおばあ様の顔は、真剣なもので不安をあおる。

「…琴葉ちゃん、あのね。あなたに言わないといけないことがあるの」

「…え」

言わないといけないこと…?

聞き返そうと口を開きかけたその刹那。

「琴音ちゃん!!」

「琴音!!!」

奏多さんと暁くんの声に反射的に振り返る。

鬼の形相とは、こういうものを言うのだろう。目をギラつかせ、銃口を向けてくる陣之内総一郎は、先程までと同一人物とは考えられない。ただ、憎悪に染まった人の姿がそこにあった。

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