私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

「姉上は、宮内と婚姻を結んですぐお前が生まれた。姉上は、お前を心の底から愛していたよ」

お母さんの記憶は、どれも暖かくて、優しい。

愛されてた自信はある。それは、お母さんだけでなく、お父さんにも。

…だからこそ、だからこそ、お父さんとお母さんを悲しませるようなことをしたくなかった。

「…あの時。田部がお前を連れて地下室から飛び出して来たとき、私はすぐに地下室に降りた。そこで母と、血走った目をした父を見つけた。そこから父の目を盗み、母を何とか病院へ連れていき、今日まで隠し通した」

それが真相。おばあ様が、今こうして生きている理由。

「だが、母を守ることに必死になりすぎていた。…まさか、姉上が手にかけられるなど、思ってもいなかった。それに、琴葉、お前も…」

旦那様の後悔に染まる瞳が向けられる。その目はまるで、本当の娘を見ているかのように、温かいものだ。
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