私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

「私の力がないばかりに、お前も、姉上も守れなかった。…本当にすまないと思ってる」

「…」

突然の謝罪になんの反応もできない。旦那様はそれでも怒るような素振りは全く見せなかった。

不意に旦那様は表情を真剣なものにし、源之助さんを見る。

「永塚殿、約束通り陣之内家は全ての財産、権限を田部宗次郎に譲渡します」

その宣言に、空気は一瞬で静まりかえる。

その宣言は、終わりを告げる。

「ッ…な、バカな!!お前は何を!!!」

「先代、陣之内家の当主を退き、その権限を私に譲った。従って、今陣之内を決めるのは私です」

「貴様、自分が何をしようとしているのか、分かってるのか!!」

「…ならば、今までの悪事を公表された陣之内家が今の通りでいられると?」

旦那様の言葉に、陣之内総一郎は返す言葉を失う。言葉の代わりに向けるのは、憎悪と化した感情を露にした眼光。
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