私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
琴音の瞳に自分が映り続けている。俺をじっと見つめているようだった。
「琴音…、琴音」
バカみたいだ。呼ぶことしかできねぇのか、俺は…。
琴音の頬に滴が流れる。それが自分の涙だと気づいて咄嗟に拭う。
泣いてる場合かよ。早く、医者を呼んでやらないといけねぇのに。くっそ、止まんねぇじゃねぇかよ…。
声を噛み殺すように唇を噛む。ベッドに顔を押し付け、波が収まるのをじっと待った。
「…」
静かだった。
その静けさは少し不気味で、顔を上げた時琴音の顔を見て違和感を持った。
「…琴音?」
頭を撫でる。視線は俺に向いたまま。でも、表情は何1つ変わらない。
「琴音?なぁ、琴音?」
変わらない。表情が、瞳が。…感情が見えねぇ。
違和感の正体はそれだった。
琴音から何も感じねぇ。ただ、目を覚ましただけ…、なのか。
目の前が暗くなったような気がした。