私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「…平沢も、親父も、1週間あれば退院できるだろう」
「…そう、ですか」
安心させるためにいってくれたはずなのに、その言葉を聞いても心は動かなかった。
そこまで大きな怪我じゃなかったんだ。うれしいはずなのに、よかったと思えるはずなのに。…そう、仕組まれたようにしか感じられなかった。
私の反応に季龍さんは眉を顰め、頬を触れられた。
「言いたいことがあるなら言え」
「…ありません」
「…なら、思ってることを言え」
思ってること…。あふれだそうとした思いを、口をきつく閉じて止める。
これは、この思いは源之助さんを、平沢さんを侮辱することになる。
私がそんなことを思うのは、ただの傲慢だ。…こんな思い、季龍さんに知られたくない。
固く閉ざした口を、指先がなぞる。季龍さんを見上げると、感情の見えない目をしていた。