私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「…止められたかも、しれない」
自然と動き出した口は、ふたを失った思いは、止められなくなる。
「源之助さんは、あんなこと思ってない。もし、本当にそう思ってるなら、私をあのオークションで放っておけばよかった。…あんなことをする意味なんてないです」
「…」
「あの時、無理でも口を挟んでいれば、平沢さんが源之助さんを撃つ前に止められたかもしれない。こんなことにならなかったかもしれないのに…」
頭を撫でられる。…父を、兄を侮辱する言葉なのに、季龍さんは何も言わない。
無言のまま、私を見つめる季龍さんは不意に笑みを浮かべた。
「同じこと、考えてんだな」
「…え?」
季龍さんは私から手を放すと、己の拳を握りこんだ。
「俺にもっと、力があれば。親父も、平沢も、あんな真似しなくても済んだかもしれねぇ。…俺は弱い」
「ッ違う!…季龍さんは弱くなんか」
言葉が出ない。季龍さんは弱くなんかないはずなのに。そう、言いたいのに。
どうして、言葉が出てこないの?