私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
季龍さんを見つめていると、何かが投げられる。
布団のすぐそばに転がってきたそれは、白い紙袋だ。それを手に取ると、中に入っているのは、洋服だった。
「それに着替えて早く来い。すぐに出る」
顔を上げた時には、季龍さんの姿はもうそこになかった。
…行くって、昨日言っていた、ついてきてほしいところ?
ぼんやりとした頭のまま、紙袋に視線を落とす。
…ぼんやりしてる場合じゃないッ!布団から出て、紙袋の中身を引き出す。ろくに確認をしないまま、着ていた服を脱ぎ捨て紙袋に入っていた服にそでを通す。
ジーンズに、白のニット。アウターは紺のロングコートだ。
そこまで身に着けて、鏡に映った自分の髪が跳ねていることに気付く。跳ねている周辺の髪をまとめ、三つ編みに編んでピンで留める。
ろくに片付けないまま廊下に出ると、壁に背を預けていた季龍さんと視線が重なった。
「あの…」
話そうとした矢先に口を指先で抑えられる。反対の手で、自身の口の前に人差し指を立てる季龍さんは私の手を握ると、無言で歩き出した。
手を引かれるまま、ついていくとまっすぐに玄関に向かう。
靴を履き、外に出ると吐いた息が白く空へ上る。