私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
たどり着いた場所に思わず目を瞬かせる。
…ここ、逃げてきた駅だ。
永塚組に連れて来られて2日目の日。裸足のまま逃げ出して、交番に逃げ込もうとした直前で奏多さんに捕まっちゃって。
それで、季龍さんは迎えに来てくれたんだっけ…。
もう、ずいぶん昔のことのように感じる。
始発が動き出したのか、まばらな人影はあるものの、昼間の光景とは全然違うものに見えた。
少し感慨にふけっていると、いつの間にかタクシー乗り場まで来ていて、止まっていたタクシーのドアが開く。
季龍さんに背を押され、先に乗り込む。すぐに乗ってきた季龍さんは、一度離れた手をもう一度つなぎなおした。
「セントラルネイチャー病院まで」
「…少々お待ちください」
季龍さんの告げた行き先に、タクシーの運転手さんは眉をひそめると、すぐに車に搭載されているナビに手を伸ばす。
少しの間を開けて、タクシーの運転手さんは困惑した顔で振り返った。
「お客さん、そのセントラルネイチャー病院とやら、△△県だよ?新幹線で行った方がいい」
タクシーの運転手さんの言うとおり、ナビに表示されている経路は、日本地図の縮尺がおかしいことになっている。
おまけに予想到着時刻は今から8時間後と表示されていた。
これには季龍さんも軽く目を見開いていて、考えるようなしぐさをした。