私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

「これはだめだ。信洋に跡をつけられる」
「GPSですか?」

「それだけじゃねぇよ。通話記録から検索履歴まで筒抜けだ」

電源の切れたスマホを弄びながら季龍さんはため息をつく。

優秀だが、こういう時は面倒な奴だと続ける季龍さんに、信洋さんに言ってあげてほしいって言ったら、嫌って言うだろうな…。

「なんだ?」

「信洋さんに言ったら、喜びそうだなって」

「調子に乗らせると面倒だ」

やっぱりそうやって返される。…でも、きっと本心なんだろうな。

電源の切れたスマホを返され、それをポケットに入れる。スマホを受け取った手は季龍さんに握られる。

席はボックスのように立て並びで、人もまばら。他の人から見られるかもしれない。でも、見られていない可能性の方が大きいんじゃないかって。

そんな欲に負けて、繋がれた手を握り返した。
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