私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
看護師さんの間に入り、女性の手を握る。
その瞬間、女性は声を止めて私を凝視する。
その眼は血走っていて、人を殺してしまうんじゃないかっていうくらい迫力があった。
それでも、笑い続けた。
怖くない。誰もあなたを傷つけない。そう、伝わるように。
「…え?」
「関原さん?」
女性は徐々に表情を失っていき、やがてこの部屋に入ってきたときと同じ、静かな面影に戻った。
ゆっくりと手を放す。落ち着きを取り戻した女性は、もう私たちのことなんか見ていないようだったけど、それでも構わない。
彼女が味わった絶望も、恐怖も、悲しみも、全部全部包み込んでくれる人が現れたら、支え続けたら、きっと季龍さんのお母さんは還ってこれる。
私が、そうであったように…。