私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「…はぁ」
1時間は経ったかな…。もうそろそろ出てきてもおかしくないと思うけど、当たり前のように音なんて聞こえない。
寒い。建物の中なのに、こんなに寒いなら外はどれだけ寒いのかな…。
自然と瞼が下りてくる。こんなに寒いのに、眠気なんて来るんだ…。
視界が完全に閉ざされたとき、不意にドアを開けるような音が聞こえた気がして、瞼を上げる。
顔を上げると、呆然とした顔の季龍さんが見えた。
自然と表情が緩む。よかったぁ、季龍さんいたんだ。
「…ッお前、何やってんだ!?」
手首を掴まれて引き上げられる。今出てきたばかりの部屋に引き入れられ、その腕に抱きしめられた。
「部屋にいろと言っただろうが」
「…朝まで出るなって、言われただけです」
「屁理屈か」
抱きしめられる力が強くなる。そのぬくもりに、強さに、心の底から安堵した。
季龍さんはここにいる。ここに、いてくれる。
感じていた寒さは嘘のように消えて、心から満たされていくような感覚に幸福を感じた。