私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
考えていると、パタパタと足音が聞こえてきて振り返る。廊下の角から顔を出したのは梨々香ちゃんで、やっと見つけたと言われながら抱きつかれた。
「ことねぇ!お兄ちゃんの誕生日会しよう!」
「季龍さんの誕生日?」
脈絡のない話に目を丸くする。
季龍さんの誕生日…。確かに私が永塚組に来てから1回もやってない。何月生まれなんだろう。
そんなことも知らなかったんだと気づいて、少しだけ悲しくなった。
「ことねぇ?」
「ッ…何でもないよ。季龍さん、誕生日近いの?」
「ううん。もう過ぎてるけど、やれるなら今かなぁって!」
梨々香ちゃんは満面の笑みを浮かべる。その笑顔が、悲しそうに見えるのは気のせいじゃない。
…はっきりした期日は分からないけど、永塚組は別れる。
季龍さんの誕生日をみんなで祝えるのは、これが最後になるだろう。