私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
屋敷に戻る頃には夜が更けていて。寝静まった屋敷の中は静かすぎて気持ち悪いくらいだ。
足を向けたのは、寄りつかなかった琴音の部屋。だが、部屋まで来てそこから前に進めなくなった。
今更どんな顔であいつの前に出る気だ。5か月近くほっといたくせに…。
襖にかけていた手を下げる。俺は…。
「若?」
かけられた声に肩が跳ねる。視線を向けた先には目を丸くさせた奏多がいた。
…なんて言えばいい。謝るのか?開き直るべきか…?
こんな時でさえ、自分の都合のいいように運ぼうと考えることに嫌気がさす。結局、なんと言えばいいのか分からず、押し黙ることしかできなかった。
「…若」
「…俺、は」
「これ、琴音ちゃんに渡してあげてください」
「ッは?」
突然押し付けられたものを思わず受け取る。奏多は笑って俺の背を押す。