私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
車は駐車場に入り、止まる。
車の外に出ると、包まれた空気に気のせいだろうか、懐かしさを感じる。
私が生まれ育った街。…帰ってきたんだ。この街に。
そう思うと目頭が熱くなってきた。
「琴音」
車を降りてきた季龍さんに手を差しのべられる。その手を自分の手を重ねると、歩き出した。
「いってらっしゃーい」
車でひらひらと手を振る信洋さんは着いてこないらしい。手を降り手を振り返していると、強く引っ張られて前を向かされる。
急いでるのかな?季龍さんの足取りは少し早い。手を握り返したけど、視線は向けられなくて足取りも変わらなかった。
病院のエントラスを抜け、エレベーターに乗り込む。季龍さんが押したのは5階。
どうしてか、また口を閉ざしてしまった季龍さんに不安が心を塗りつぶしていく。