私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「…きりゅ「ここだ」」
呼び掛ける言葉に被さってしまった。
いつの間にか病室の前にいた。病室の名札には、『宮内 陽介』の名前。
お父さんがこのドアの向こうにいる。急に心臓がドクドクと響きはじめて気持ち悪い。
深呼吸をして顔を上げる。1歩前に踏み出し、ドアノブを握る。振り返ると、季龍さんは少し離れた位置にいた。
「季龍さん?」
「後で迎えに来る。ちゃんと会ってこい」
…本当に?
最初に浮かんだのはそんな言葉。
どうしてだろう。そんなこと、考えるなんて私、臆病になってばっかりだ。
…でも、でも、でも。
ドアノブから手を離して、季龍さんの腕の中に飛び込む。季龍さんの背に腕を回し、引き離されないように力を込める。
「琴音、何やってんだ」
呆れたような声。…私の思い違い?顔を上げると、季龍さんは困惑した顔を浮かべていた。