私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

だから、これともお別れをしないといけない。

私が前に進むために。旦那さんに、これ以上失礼とならないために、気持ちの決別をつけるときが来たんだ。

手に持ったものにもう一度視線を落とす。

…大好きだった。あの頃は子どもだったって言えるけど。それでも、私の初恋は間違いなく永塚季龍さんだ。

あり得ない出会いかたをした。あり得ないはずの恋心だった。…あり得ないはずの、両思いだった。

ただ、それを残すには、子ども過ぎた。

手にした2つの思い出を握りしめる。

過去にすがるのは、季龍さんに希望を抱くのは、旦那さんに、嘘のをつくのは、もうこれで全部終わりだ。

手を高く上げ、打ち付けられている波を見つめる。

「…さようなら」

全部、思い出の中に消えていくんだ。

手にしたそれらを海に投げ捨てようとしたその瞬間、その手は誰かに捕まれて動けなくなる。
< 347 / 407 >

この作品をシェア

pagetop