私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
だから、これともお別れをしないといけない。
私が前に進むために。旦那さんに、これ以上失礼とならないために、気持ちの決別をつけるときが来たんだ。
手に持ったものにもう一度視線を落とす。
…大好きだった。あの頃は子どもだったって言えるけど。それでも、私の初恋は間違いなく永塚季龍さんだ。
あり得ない出会いかたをした。あり得ないはずの恋心だった。…あり得ないはずの、両思いだった。
ただ、それを残すには、子ども過ぎた。
手にした2つの思い出を握りしめる。
過去にすがるのは、季龍さんに希望を抱くのは、旦那さんに、嘘のをつくのは、もうこれで全部終わりだ。
手を高く上げ、打ち付けられている波を見つめる。
「…さようなら」
全部、思い出の中に消えていくんだ。
手にしたそれらを海に投げ捨てようとしたその瞬間、その手は誰かに捕まれて動けなくなる。