私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

突然のことに驚いて振り返ると、知らない男性に手を捕まれていた。

…ドクン

心臓が高鳴るのを自覚した。知らない男性?…ううん、私はこと人をよく知ってる。……ずっとずっと、会いたくてたまらなかった、この人を思って泣いた。

目頭が熱くなっていくのが分かる。記憶にある姿より、ずっと大人びて、貫禄がついたその姿に目を奪われた。

「…季龍、さん?」

「あぁ」

10年、1度たりとも会うこともなく、音沙汰もなかった人が目の前にいる。

その事実にしばらく呼吸すら忘れ、その姿に見とれてしまっていた。

…どうして今なの?…今までどうして何も連絡してくれなかったの?どうして、あの時置いていったの?

聞きたいことは頭の中に溢れるほど出てくるのに、何1つ言葉に出すことはできない。

互いに何も話さないまま、時間だけが過ぎていった。
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