私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「居ついたな。こりゃ」
「平沢さんが餌やるからだろ…」
「あ?奏太だって餌やってるぞ」
「なんで餌くれる奴より琴音に懐いてるんだか…」
呆れたようにため息をつく暁は、琴音のズボンのすそを引っ掻いている子ネコにまた叱っている。
それでも聞く耳を持たない子ネコは、琴音の服に爪を引っ掛けてよじ登り始めた。
…すげぇな、こいつ。
呆気なく暁に引き離された子ネコだが、諦めることなく鳴いて琴音に向かって手足をばたつかせていた。
結局、琴音を縁側に座らせ、膝の上に子ネコを置いた形で落ち着く。琴音の膝の上で気持ちよさそうに寝始めた子ネコに暁はため息をついた。
「もういっそのこと飼います?」
「いいんじゃねぇか?よし、今日からお前は寅之助だ」
「こいつメスですよ」
「あ?んじゃ寅だ」
「オスでもメスでもトラでいいじゃないですか」
暁と平沢の変わらないやりとりに苦笑する。
ただ、そこできっと笑うはずの琴音はぼんやりと庭を見つめているのが、たった1つの違和感だった。