私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「お前が望むなら、俺はお前をかっさらってやる。…もう二度と、お前の手を離したりしない」
…差し出された希望は、どれだけ望んでも選べなかったもの。だから諦めて、気持ちを押し込めて、もう過去なんだって自分に言い聞かせた。
はずなのに、揺さぶられる。
目の前の希望に、望んだはずの未来にすがり付きたくなる。
……でも、私は。
「…ありがとう、季龍さん」
この手を掴むには、もう遅すぎたんだ。
私は、もう子どもじゃない。…これ以上、旦那さんを裏切ることなんか出来ない。したらいけないんだ。
季龍さんを見上げる。心の底から笑みを浮かべた。
「季龍さんのこと、大好きでした」
「…」
季龍さんはしばらく私を見つめていたけど、不意に笑みを浮かべ、その手を下ろした。