私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)

「で、今更琴音の様子を見に来たのかよ。この甘ったれは」

不意に刺された言葉に何も言い返せなくなる。

平沢の目は、さっきまでの優しさはなく、軽蔑の色を隠そうともしていなかった。

「…俺は」

「仕事を理由にすんじゃねぇぞ。俺は、琴音を最優先にしろっつただろ。それなのに、こいつは仕事に逃げやがった」

「平沢さん」

「止めるな暁。こいつは、自分を救った奴の面倒も見れねぇような、クズ野郎だ。こんな奴に俺は娘を任せるようなクソ親父にはなりたかねぇんだ」

平沢の目は本気だ。平沢は本気で琴音の親父になった気でいる。…いや、平沢にとって琴音は本当の娘と同じなんだろう。

組の跡継ぎとして失望させた挙句、琴音を守る奴としてまで失望させてしまった。

その弱さの原因はすべて俺の未熟さと甘さだ。

弁解しようとは思わない。平沢をここまで失望させた。その代償は俺が考えている以上に重い…。
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