私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
28.信頼
再会
‐客観視‐
世界が時を止めたように制止する。
自分の手を掴んだまま、息を整える幼馴染みである成夜を呆然と見つめる琴葉。
そして、その琴葉を驚愕に満ちた顔で見つめている季龍。
なぜ。どうして。
琴葉と季龍が思い浮かべている言葉は皮肉にも同じ。だが、向けられている対象は別だ。
言葉がでない。沈黙が落ちていたが、息を大きく吸った成夜が顔をあげる。
「行くぞ!」
「ッ!?」
強く引かれた手。その手に引かれるまま、琴葉は踏み出す。
対する季龍はその場から動けなかった。驚きのあまり、その手に力はなく、琴葉と繋いでいた手は意図も簡単に離れてしまう。
琴葉が振り返る。それは一瞬だったが、季龍を見るその目は悲しみの色に染まっていた。