私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
倒れかかった成夜から琴葉を引き離すのは容易だ。琴葉を抱き上げた季龍は、成夜に視線を向けることなく背を向ける。
「……っま、て…」
「…」
眩む視界の中。取り返したはずの琴葉が季龍に抱かれている。
成夜は立ち上がろうとしたが、それは叶わない。暗くなっていく視界に最後まで抗ったが、次の瞬間地に伏せる。
意識を飛ばした成夜を見て、奏太は奏多に視線を向ける。
「兄さん、やり過ぎ」
「そんなこと言ってる場合か」
「いや、でもさぁ。こいつ一般人だろ?」
「関係ない。琴音ちゃんが最優先だ」
普段は温厚な分、その正反対とも言える行動を容易くとってしまう奏多に、双子の弟といえど、恐怖を感じずにはいられなかった。
「奏多、奏太。そいつを信洋に渡しとけ」
「どうするんですか、これ」
「どうもしねぇ。…だが、忠告はしとけ。余計なことをされるのは面倒だ」
琴葉を狙うやつはきっと近くにいる。余計なことをされるのは邪魔でしかなかった。