私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
27.戻らないキミを
僅かな灯火
「 !」
声が聴こえる。
ずっと、聞きたかった声。もう、忘れかけてしまった声の音。
目を開ける。いる。あいつが、ずっと、ずっと探していたあいつがいる。
白い花が咲くそこで、笑っていた。
「琴音」
名前を呼ぶ。手を伸ばす。
こっちに来いと呼ぶ。
探していたんだ。お前を、ずっと、ずっと…。
「 」
…どうして、来ない?…どうして、聞こえない?
笑っている。あいつが、すぐそこで、笑っているのに…。どうして俺の足は動かない?
「…こと、ね?ッ」
頬を何かがかすめていく。
その瞬間、華が咲く。赤い、朱い、華が…。
白かった花が赤く染まる。赤く、赤く…染まって、赤く染めあげていく。
赤い華の中心で、琴音は…赤く、染まって…。