私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「話せるか?」
「…コク」
全部、知っておきたい。そのために、信洋はわざと中野蓮美の話題を出した。
それは、私に隠し事をしないと案に教えてくれていることだ。
ここで私が音を上げれば、きっと季龍さんは戻す記憶にセーブをかける。
私を守るために、季龍さんは嘘をつく。
知っておかなきゃいけない気がする。だから、ここで頑張らなきゃいけないんだ。
季龍さんは不本意そうだったけど、私が使っていた部屋に戻ってくれる。
待っていてくれた信洋さんたちは、私を見るなり表情を歪める。だけど、話をやめようと言い出すことはなかった。
「思い出したんだね」
「…はい」
「俺たちがここちゃんを助けに行ったことは覚えてる?」
「…はっきりは、覚えてないです」
あのときのことははっきり覚えてない。
何かの膜を通したような状態で見ていた風景はおぼろげで、聞いていたはずの音もぼやけていてはっきり音を拾えそうにない。