私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
震えてる手を押さえようとしても、押さえる手さえ震えていて、どうにもならなかった。
「ここちゃん、とりあえず休んで。ね?」
「…はい」
季龍さんの手が回る。その腕に身を任せるとあっという間に抱き上げられて部屋を出た。
そのまま直行したのは季龍さんの部屋で、ベッドに下ろされるけど手だけでなく身体中が震え出して止められなかった。
「今日はもう休め」
「…私、いつから震えてましたか……?」
「…吐いてからずっとだ」
吐いてから……か。
それは、あれを思い出したから?
ベッドは、あれを連想させるから?
怖い。
あれが初めてじゃなかった。でも、怖かった。気持ちと感覚が一致していないことに、無理矢理されたことに。
消えて……消えてよ。
あんな記憶、いらない。
あんなの、私じゃない。
あんなの、消えてなくなってしまえばいいのに…。
きつく目を閉じる。それでも、全く遮断されない記憶が押し寄せてきて…。