青い恋人たち 上
ブレーキをかけてから、30mぐらい先で青は自転車を止めた。

「わっ、すいません!自分の不注意で…、大丈夫ですか?!」
フードの人物は、後ろから見る限りどこもケガはしてる様子はなく、そのままこっちに振り返ろうとした。

ピロリン!
「あっ、みほからメールだ。」

真央がスマホに目を移した時、フードの人物はこちらを真っ直ぐ見た。

「ほんと俺の不注意でした…申し訳ありません。あの…学校があるので失礼します。」

そう言って青は深々と頭を下げ、自転車の方へと体を向ける。

「落とすからスマホしまっとけよ。」

真央は制服のポケットにスマホを直し、自転車が動くと青に捕まった。

どんどん離れていくフードの人物をふと見ると、



(…真っ直ぐこっちを見てる??)


顔こそよく見えなかったが、体はいつまでもこっちを向いていた。

「青兄、さっきの人まだこっち見てるよ。」
「ん?」

真央は先程の光景を思い出した。

フードの中の、揺れた髪の中から見えたあの目を。

普通は目を見ただけで、相手の感情などを理解するのは不可能だが、
真央にとっては深く、
静かで哀しい目をしていたような気がした。

(不思議な人だったな…。)

そう思ったのもつかの間、いつのまにか学校に着き、終業式を終えた。
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