タイムスリップ
「おぉおおー!!大きい!!」
駅から歩いて約15分。
時刻は13時30分。
私達はお母さん達から教えてもらっていた旅館に着いた。
だけど…
「海香…ほんとにここで合ってる…?なんかめっちゃ高そう…我が家の収入ではこんなとこ泊まれるはずが…」
目の前にある旅館は二階建ての大きなお屋敷のような見た目で、敷地内には様々な花や木々があり旅館というよりはお金持ちの大きなお屋敷みたいな感じだった。
…我が家の家計に甚大な被害が出ているのでは…
もしかして帰ったらもやし生活!?
「あれ、言ってなかったっけ?うちの両親が知り合いから貰ったホテル・旅館1泊無料券を使ってるんだよ。1泊タダならって普段なら泊まれない高い旅館予約してくれたの。私たちの両親が払ってるのは1泊分だけ。」
「聞いてないよそんなの!でもよくそんな貴重な無料券その知り合いの方くれたね…?」
「その人独身なの。1人で旅行とか虚しくなる…って言ってくれたらしいよ。」
「世知辛いね…」
何はともかくそのくれた人に感謝だ…!
「楽しもーね海香!倒れるまで遊ぼう!」
「そーだね楽しもうね希空!倒れたら駄目だけどね!」
話をしながら敷地に入る。
こんなに大層なところだとは思わなかったので私はだいぶラフな格好。
中で浮いちゃいそうだ。
「あ、あそこが入口かな?」
少し歩いて海香が立ち止まり左の方を指さす。
指の先の方向を見てみると。見るからにリッチな感じが漂う引き戸があった。
「和だね…」
「The、和だね……」
引き戸を開け、中に入る。
エントランスには机があり着物を着た女性が2人座っていた。そこでチェックインして部屋の鍵を受け取るのだろう。
「希空はここで待ってて。」
そう言うと海香は小走りで受付に向かう。
それから五分ほど経った頃、海香が鍵を持って戻ってきた。
「205号室。2階だってさ、早く行こ?」
そう言うと海香は階段に向かってスタスタと歩き出した。
私も慌てて後を追う。
「おお2階か〜景色良さそうじゃない?」
2階から見える綺麗な海を想像して少しわくわくする。
太陽に照らされてキラキラ輝く海はさぞ綺麗だろう。
「そう?2階って割と低そうなイメージだけど」
景色を想像してニタニタと笑う私に呆れたように海香が言う。
相変わらず鍵は指でクルクルと回していた。
「でもここって結構高いところに建ってるよね?なんかこう、海とか見えそうだけど。」
「んー?あー…それは確かに。」
「でしょ?」
「うん。」
海香はクルクルと回していた鍵をパシッと止めると、上を見上げた。
「てか2階行くだけなのに階段長かったし、3階建てなのに外観の高さそれなりにあったし、景色を映えさせる為にそういう造りにしてるのかもね」
「なるほど。」
「ほい、部屋到着。じゃ開けるよ」
そういえば和風テイストのくせに部屋は襖ではなく扉タイプだ。
海香が鍵を穴に差し込むとカチッと音が鳴る。
――ギイッ…