タイムスリップ
そう呟いたそのとき、

___ボーン…ボーン…ボーン…ボーン…


聞こえてきたのは
地の底から唸り響くような、低い、低い鐘の音。

「え、なに何。鐘の音…?」

突然鳴り出した不気味な鐘の音に思わず身がすくむ。

おまけに風も吹いてきてかなり肌寒い。

――いそいでここから出なきゃ!

焦る気持ちを抑えながら空洞から出ようと一歩、足を踏み出す。

そのとき、

__ガゴンッ!!!


「えっ、うわっ!!!?」

急に、地面が揺れて私は思わず尻もちをついてしまった。

「じ、地震…?」

おそるおそる立ち上がってみると、

さっきまでとは空気がガラッと変わっているのに気がついた。

さっきまでは〔じめ~っ〕としてたのが
〔もわぁあ~〕とした感じになったのだ。

少し寒いくらいなのに湿気がすごくて生ぬるいような、変な空気。

あまりの空気の気持ち悪さにこれまで感じてこなかった不快感が急に湧き上がってくる。

身体にまとわりつくような空気。
だんだんと気分が悪くなってきて
気を抜けばすぐにでも倒れてしまいそうだった。

「今すぐここから出なきゃ…」

声に出して自分がここにいることを確認する。
いつの間にかスマホのライトは消えていて、あたりは暗闇に包まれていた。

自分の姿も見えないから声を出さないと自分ごと闇に溶けてしまいそうな感覚に陥る。

いそいでスマホのライトを付けようとするが、どういう訳かスマホが全く見当たらない。

「嘘でしょもうこんなときにっ!!」


とにかく壁伝いで歩いていけば一方通行なのだから出口に辿り着くはず。

取り敢えず歩こうと一歩踏み出した時だった。

「え…?」

そこには地面があったはずだった。

穴なんてなかったはずだった。



でも私は____落ちた。


空洞から足を一歩踏み出した途端、底の見えない、穴に。


悲鳴を上げる暇もなく。

深く、深く、落ちていった____




< 21 / 27 >

この作品をシェア

pagetop