タイムスリップ
あなたの目
「…どうして…どうしてリンちゃんの目は赤くないの…?」
悲しそうな声で大和撫子さんが呟く。
どうして目が赤くないか?それはこっちのセリフだ。
どうして大和撫子さんは目が赤いんだ?
「どうしてって…そんなこと言われても…」
「昨日の!リンちゃんの目は確かに赤かったわ!」
私の戸惑いの声に被せ気味で大和撫子さんが言う。
「昨日は赤かったって…赤くなかったらなにか問題でもあるの?」
「…っ、問題大ありよ!目が赤くない人を見つけたら時間管理機関に通報しなくちゃいけないんだから!」
「つ、通報!?え!?何で!?いや時間管理機関!?なにそれ!?」
「それは………と、とにかく、これまでのリンちゃんの様子を見て確信したわ。取り敢えず私は今日リンちゃんは見なかったことにするから、リンちゃんは家に帰りなさい。
あまり人と目を合わせちゃダメだからね!」
そう言うと大和撫子さんは立ち上がり心配そうな目で私を見ながら「がんばってね」と言い残して歩き出し、やがて公園内の人混みに紛れて見えなくなってしまった。
「え、ええ…」
疑問を解消するために声を掛けたのに
結局、謎が増えただけだった。
《目が赤いこと》《時間管理機関》
《私の体の元の持ち主》
これは聞き込みを続ければなんとか分かりそうだ。
でも…
《この時代に来た経緯》
こればかりは誰に聞いたって分からないだろう。
私は近くにあったベンチに座り考え込んだ。
この時代に来る前…私は何をしていたんだろう…?
この時代に来てからずっと考えているが、どうしても思い出せないのだ。
ここに来るまでの経緯が。
そうやって20分ほど考え込んでいただろうか。
それは唐突にやってきた。
『希空ーー!?一人で行ったら危ないよ!?』
『――と、き、を…時を…?』
ズキっと走る頭の痛みと共に流れてくるセリフ。
それは瞬く間に私の頭を駆け巡っていった。
「何…今の…今のは…私の記憶…?」
ズキズキと痛む頭を押さえながら呟く。
駄目だ。余計混乱してきた。
取り敢えず自分の情報から整理してみよう。
名前とか家族構成とか…順番に整理していけば私がここに来るまでの経緯も思い出せるかもしれない。