医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛
「……新しい先生、怖い」
処置室を出てすぐ、力くんがポツリと言った。
ぎゅっと私にしがみ付いて、言わずに我慢していたことを打ち明けてくれたみたいな声だった。
思わず『そうだよね、怖いよね』と同調したくなってしまった。
でも、それをぐっと押し込めて口を開く。
「力くん、あの天笠先生はね、すっごく上手な先生なんだよ。今日のチックンも早く終わったでしょ?」
顔を覗き込むと、力くんは小さく頷く。
「上手だから、怖いの……?」
「うーん……たくさん、病気のお友達を助けてきたから、いつも真剣な顔なのかもね」
「しんけん? 真剣って何?」
「あ、ほら、フライレッドもさ、悪者と戦う時にはニコニコしないでしょ? 天笠先生も、病気と戦ってるからじゃないかな」
そんな風に説明してみると、力くんは納得してくれたのか「そっか〜……」と言ってくれた。
それにしても、治療ではなく先生が怖いという患児のフォローをする日がくるとは思いもしなかった。
天笠先生が怖いという子どもはまだまだいるはず……そう思うと、仕事が増えたような気分だった。