医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛
「いや……俺の方こそ、申し訳ない」
「えっ、なんで先生が謝るんですか?」
握り締めたペットボトルから顔を上げて先生を見ると、私の視線を受けた横顔が僅かに微笑を浮かべた気がした。
薄暗いせいで目が錯覚を起こしたのかと凝視してしまう。
「余計な気を使わせたと思ってる」
そう言って横の私に顔を向けた天笠先生は、やっぱりほんの少しだけ表情を柔らかくしていて、やっぱり見間違いじゃなかったのかと余計に目が離せなくなっていた。
「今までいたところは、子どもの死を多くみるところだった」
子どもの救命救急に加えて、難病など重い病状の子どもを受け入れる病院だったと聞いている。
私のまだ経験したことのない、患児の死という現実がそこには日常的にあったのかもしれない。
「救えない命を目の当たりにするたびに、医者は、奇跡は起こせないんだと思わされた」
手にある缶を握り締める力が強くなるのが見て取れる。
安直に『笑っください』なんて言った自分を、今になって深く後悔していた。