医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛
「来たことなかったなら良かった。彼氏とでも来たことあるのかと思ったよ」
「えっ?!」
さらりとなんでもなさそうに、ビクリとなってしまうようなことを口走られ、このお店の店内には相応しくない声を上げて反応してしまった。
「なっ、ないです! 彼氏なんか、いませんし……」
看護師になって東京に出てきてからというもの、私に浮かれた話はない。
新米故、毎日の仕事に追われてきたし、特にこれといった出会いもなかったからだ。
我ながら寂しいアラサーだけど、ここで天笠先生に変に見栄を張る必要もない。
「今は、毎日可愛い子どもたちに囲まれてますし、それで十分というか……」
微妙な話の流れになってきたな、と思っていたところに、ソムリエエプロンを付けたさっきとは違う男性スタッフがテーブルへとやってくる。
「お食事のお支度を失礼いたします」と、ピカピカに磨かれたグラスにミネラルウォーターを注ぎ始めた。