医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛


「来たことなかったなら良かった。彼氏とでも来たことあるのかと思ったよ」

「えっ?!」


さらりとなんでもなさそうに、ビクリとなってしまうようなことを口走られ、このお店の店内には相応しくない声を上げて反応してしまった。


「なっ、ないです! 彼氏なんか、いませんし……」


看護師になって東京に出てきてからというもの、私に浮かれた話はない。

新米故、毎日の仕事に追われてきたし、特にこれといった出会いもなかったからだ。

我ながら寂しいアラサーだけど、ここで天笠先生に変に見栄を張る必要もない。


「今は、毎日可愛い子どもたちに囲まれてますし、それで十分というか……」


微妙な話の流れになってきたな、と思っていたところに、ソムリエエプロンを付けたさっきとは違う男性スタッフがテーブルへとやってくる。

「お食事のお支度を失礼いたします」と、ピカピカに磨かれたグラスにミネラルウォーターを注ぎ始めた。

< 61 / 130 >

この作品をシェア

pagetop