医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛
「そういえば……先生、お菓子作りが趣味なんですか?」
目の前にはメインディッシュの牛フィレ肉のローストが置かれる。
思い出したようにした私の質問に、天笠先生は「ああ、さっきの」と目尻を下げた。
普段上がらない口角が上向くのは、気を許してもらっているようでなんだか嬉しい。
「お菓子じゃなくて、パン作りにちょっとハマってるんだ、最近」
「えっ、パン! あ、だからさっきパンは何が好きかって……」
「そう。クロワッサンも焼いたことあるよ」
「クロワッサンって、家で焼けるんですか?!」
今まで、パンなんて家で作ったことのない私は、未知なる世界に興味津々。
それ以上に、天笠先生が家でパン作りにハマってるなんてことに、ただただ驚くばかりだ。
「焼けるよ、普通に。今度焼いてあげるよ、食べに来る?」
「えっ! マジですか?! ぜひ! いただきたいです!」
言われるがまま喜んで返事をしていたけど、答えて即ドキンと鼓動が高鳴る。
勢いでいただきたいなんて言っちゃったけど、それって先生のお宅にお邪魔するってこと?!
いや待って。
病院に持って来てくれるってことかもしれないし……でも、食べに来る?って聞かれたよね?!
それって……それってやっぱり……。
でもでも、社交辞令かもしれないし!
そんなことを思っていた時だった。
「お父さん――!」
優雅で落ち着いた店内に、ただならぬ叫び声が響き渡った。