医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛


男性からの反応はなく、先生は直ちに気道確保を行う。

頸動脈に手を当て確認すると、男性の締めるネクタイを緩め、ズボンのベルト、腕時計などの身に付けているものを次々と外していく。

何もできずにすぐそばで突っ立つだけになっていた私へ、天笠先生は「白雪さん」と顔を向けずに声を上げた。


「119番。アポった、うちの脳外に搬送してもらう」

「あ、アポっ」


倒れた男性は、脳出血、もしくは脳梗塞という天笠先生の診断を聞き、震える声がつい出てきてしまった。

今の今まで趣味の話を機嫌良くしていた人と同一人物と思えないくらい、天笠先生はいつも病院内で見るドクターの顔になっていた。

冗談抜きの救命の場で、緊張が背筋を駆け抜けていく。


「急いで」

「はっ、はい!」


もつれそうになる足で食事をしていた席まで駆けて戻り、震える手でバッグからスマホを取り出す。

119番通報をし、必死に状況を説明していたけど、頭の中はパニックに陥る寸前の状態だった。
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