医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛


果たして自分は、適切な処置を迅速に行えただろうか。

自分一人でいて、近くにいる人が急変した時、真っ先に救命できるのだろうか。

看護師として資格を持ち働いている。

だけど、さっきの自分はとても人命救助を行える精神状態ではなかった。

身体や声は震え、倒れている患者さんを前に怖いと怖気付いてしまっていた。


「先生は……やっぱりすごいですね」

「え……?」

「あんな場面に遭遇しても落ち着いていて、すごいなって思って……」

「それは、一応医者やってるからな。医療従事者としては当たり前――」

「私には、無理だって思ったから……」


〝当たり前〟なんて言われ掛けて、否定するように天笠先生の言葉を遮っていた。

私だって立派な医療従事者だ。

だけど、当たり前になんてきっといかない。

看護師になって人の役に立ちたい、そう思ってこの仕事に就いたのに、それなのに……。

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