医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛


「これ、使ってください」


自分もタオルで拭きながら、玄関で靴を履いたまま待つ天笠先生へとタオルを差し出す。


「悪いな」

「いえ……」


雨に打たれる前まで綺麗に流れていた天笠先生の黒髪は、雨雫が伝って束を作っていた。

私から受け取ったタオルで無造作にバサバサと髪を拭いていく。

お風呂上がりはこんな風に髪を拭いているのかとつい想像しまった自分にハッとして、慌てて先生から目を逸らした。


「ありがとう」


ざっとタオルを使って雨水を拭き、天笠先生はタオルを差し出す。

そうだ!と気付き、狭い玄関脇に置いてある傘立てに近付いた。


「あの、良かったら、傘持っていってください。まだ、雨も降っていると思うので」


返してもらわなくてもいいように、ビニール傘を、と白い柄を掴んだところで、突然、その手を先生に掴まれた。

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