医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛
掛けてくれた言葉に、また別の鼓動の音が響き始める。
胸の奥がじーんとして、瞬きをするのを忘れていた。
緊張でバクバクいっていた心臓が、トクントクンと音を変えていく。
「だから……もっと自分に自信持ってほしい」
さっきの私が漏らした自信喪失の言葉に、こんな言葉をかけてもらえるとは思いもしなかった。
背中にあった大きな手が、雨に濡れてしなびた髪にそっと触れる。
反射的にピクッと肩を震わせてしまうと、その手は慰めるように私の後頭部をよしよしと撫でてくれた。
天笠先生……。
こんな風に気持ちを救ってもらうと、また涙が出てきそうになる。
私を包み込んでいた先生の手が、静かに身体を離し、覗き込まれるようにして顔を見られる。
目が合ったと思った次の瞬間、天笠先生の端正な顔が近付いてきたような感じがした。
あっ、と思った時には、唇が久しくご無沙汰だった感触に包まれていた。
驚く間も、戸惑う間もなく、触れるだけの優しい口付けは塞いだ唇を解放する。
最後にまた髪をひと撫ですると、天笠先生は「傘、借りてくな」と言って玄関のドアの先へと消えていってしまった。