医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛


しばらくそのまま静止してしまった私は、先輩の「白雪、おーい」という声掛けでハッと自分の世界から帰還した。

慌ててさっきしていたお面作りの続きを再開する。

椅子に掛けて落ち着いてから、急激に色んなことが押し寄せて鼓動が打ち鳴り始めた。

自己完結させてもう考えすぎないようにしたところなのに、天笠先生は見事に引っ掻き回してくれた。

私に答えを委ねるような、あんな言い方は、ずるい。

だけど先生は、私と一緒にいたことを知られても何も困らないとはっきりと言っていた。

あんな態度を取られたら……あの日のことを勘違いしちゃうじゃん。

ここに来た頃は、どこかに忘れてきてしまったかと思うくらい、笑わない人だった。

それなのに、いつのまにか笑顔も見せてくれるようになった。

それを向けられたりしたら、するなっていわれても勘違いしちゃいそうになる。

あの時の抱擁もキスも、意味を知りたいなんて思ってしまうのは、やっぱり自意識過剰なのかな……?


「あぁ! 切りすぎた!」


ぼうっとしながらひたすらハサミを駆使していると、必要のない量の目のパーツを作り出していた。

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