私の失恋の行き着く先は…No.5
「なに…、言ってるのか、わからないんだけど…」
『とにかく改札出てください』
「わかった…」
とは言ったものの、頭の中は真っ白。
通話中のスマホを耳に当てたまま、フラフラと改札を出た。
「冴子」
目の前から、私の名前を呼ぶ懐かしい声が聞こえる。
顔を見たら泣いてしまうと思っていたのに。
こんなに突然だと、驚きすぎて声も出ない。
言いたいこと、伝えたいことは山ほどあるのに、なにひとつ…。
『冴子先輩?会えました?もしもし?』
範子ちゃんに返事すら出来ない。
見上げると、陽亮さんと目が合った。
1年前となにひとつ変わらない姿。
背が高く、スーツがよく似合っていて、カッコいい。
細身に見えるけど、実は筋肉質で逞しい。
クールに見えるし、決しておしゃべりなほうではない。
でも、一緒にいた時間はとにかく甘かった。